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MAESTRO フィレンツェと日本、伝統の技と技との出逢い

MAESTROフィレンツェと日本、伝統の技と技との出逢い

芸術的な革製品で有名なフィレンツェを訪れた腕

芸術的な革製品で有名な
フィレンツェを訪れた腕

腕利きの革職人、鎌田がイタリア・フィレンツェの地に降り立ったのは、2001年のこと。
GANZO「MAESTRO」シリーズを立ち上げるため、芸術的な革製品の生産地であるフィレンツェの中でも特に名高い工房兼ショップを営むピーノ氏のもとで、その伝統技術を習得することが目的でした。

フィレンツェでの滞在期間は非常に限られたもの。
短い時間の間に、マエストロと呼ばれるピーノ氏の持つ技の真髄まで吸収しなければなりません。
鎌田は日本を旅立つ前に、その美術品のように優雅な丸みと透明感のある深い光沢をたたえた革製品を作り上げるための道具を想定し、それらを携えてピーノ氏の工房を訪ねました。

ところが・・・。
フィレンツェで初めて目の当たりにした伝統の工法は、用意周到に準備してきた鎌田の予想するものとはまったく異なるものだったのです。

職人としての意地があるからこそ、一から学び直そうと決意 職人としての意地があるからこそ、一から学び直そうと決意

職人としての意地があるからこそ、
一から学び直そうと決意

「これまでの先入観を捨て、一から学び直さねば・・・」
そう考えた鎌田は、毎朝ピーノ氏のショップのショーウィンドウを磨くことから始めます。
そこには、日本で革職人として見習いを始めたころの気持ちに戻って、すべてを極めたいと願う鎌田の職人魂がありました。


鎌田の真摯な姿勢に心打たれたピーノ氏は、フィレンツェで受け継がれてきた伝統の技をひとつひとつ、伝えようとします。英語を話さないピーノ氏と、イタリア語はわからない鎌田。
でも、仕事に妥協しない職人同士として心が通じ合った二人に、言葉は必要ありません。
まさに以心伝心、フィレンツェと日本の技と技とのせめぎ合いが続きます。

そして、工房での修行も終わりに近づいたころ、鎌田の「卒業制作」ともいうべき作品を愛でるように吟味したピーノ氏は、にっこりとほほ笑んでOKサインを出しました。
その日、ピーノ氏の自宅に招かれた鎌田は、一家のあたたかい歓迎の中でほっと一息つきながら、乾杯のグラスを傾けたのです。

そして、新たなマエストロが誕生した。

フィレンツェの伝統技術に満足せず、GANZO流のこだわりを実践

フィレンツェの伝統技術に満足せず、
GANZO流のこだわりを実践

フィレンツェでの修行を終え、ピーノ氏に感謝の気持ちを込めて日本製の革包丁をプレゼントした鎌田は無事、日本に帰ってきます。しかし、ただフィレンツェの伝統技術を日本で製品化するだけでは、鎌田は決して満足しませんでした。
フィレンツェ伝統の工法は確かに見事なものでしたが、日本のきめ細かな技術の粋が集められた革小物の素晴らしさを熟知していた鎌田にとっては、まだ改良の余地があると映ったのです。

たとえば、それぞれの革の扱い方。
GANZO「MAESTRO」の製品には、もともと良質な革が使われていますが、革には個体差や部位による差があり、その繊維の密度や風合いなどが微妙に異なります。そのため、すべての製品をGANZOの品質基準で市場に出すには、そうした革の特性に応じて各工程を少しずつ調整する必要がありました。触ってもほとんど厚みが感じられない薄さに革をすく技術、水に濡らした革を根気よく木型で成型する作業、各パーツの革の乾燥度合い、皺ひとつ出ないように貼り合わせる工法など、それらすべてのプロセスでGANZO流のこだわりを実践したのです。

フィレンツェの革製品をも超えるほどのクオリティを追求 フィレンツェの革製品をも超えるほどのクオリティを追求

フィレンツェの革製品をも
超えるほどのクオリティを追求

また、小銭入れのように本体に蓋をかぶせるタイプの製品では、そのはまり具合も重要。
日本の市場では高い機能性が求められることを知っている鎌田は、蓋の開け閉めのときに心地良い感覚が残るほどの絶妙なはまり具合を研究し、その工法を考案します。
さらに、取っ手部分もより強固にするなど、こだわり抜いた日本の職人技を施すことで、GANZO「MAESTRO」シリーズはフィレンツェの革製品をも超えるほどのクオリティを追求したのです。


このシリーズの誕生後、長い年月を経た今でも、鎌田はフィレンツェでのピーノ氏との交流を昨日のことのように覚えています。
フィレンツェと日本、伝統の技と技との出逢いがなければ実現しなかったGANZOの「MAESTRO」。
新たなマエストロ誕生の裏には、心が通じ合った職人同士の魂の交流と、製品化までのたゆまざる努力があったのです。

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